2021年9月5日(日)礼拝説教 士師記7章1-8節 「道が開かれる時」 説教者:赤松勇二師

<子どもたちへ>

 今年の夏は、オリンピックが行われ、今パラインピックが行われています(今日が閉会式ですね)。僕は、全部を見る事は出来ませんが、ダイジェスト放送を見ています。オリンピックに出場する選手は、「日本代表」として選ばれるようにと、ずっと練習をしてきました。今回、残念ながら代表になれなかった人たちも、オリンピックを目指してプレーしていました。選手たちは、自分よりも強い選手、自分よりも早い選手たちと戦います。時には、不安になったり、負けてしまうかもしれないと言う思いを持つ事でしょう。そのような中でコーチやチームの仲間たちに励まされ、力づけられて本番を迎えています。一生懸命にプレーしている姿は、競技を見ている人に大きな力を与えてくれます。
 さて先週お話ししたギデオンは、臆病な人でしたが、神様から大きな励ましを受けて奮い立ってイスラエルの民を導くことが出来るようになりました。今日は、そのことを見る事にしましょう。

 ギデオンたちイスラエルの民は、ミディアン人を中心とした連合軍によって苦しめられていました。ミディアン人、アマレク人、東方の人々は、毎年収穫の時期になると攻め込んで来て、作物や家畜を全部奪いつくして去っていくのです。彼らが去った後には、何も残っていませんでした。こんなことが7年間続いて、イスラエルの民は神様に助けを求めて祈りました。
 そこで神様は、ギデオンを士師(さばきつかさ)として立ててくれたのです。ギデオンは、最初臆病でしたが、神様によって力づけられ、奮い立ってミディアンの連合軍に立ち向かうために人々を招集しました。ギデオンの所に集まった人たちは、3万2千人でした。多いと思うかもしれません。けれどもミディアンの連合軍は、ギデオンの所に集まったイスラエル人の4倍以上の13万5千人いたのです(士師記8:10)。ギデオンは、ミディアンの連合軍の人数を調べて知っていたでしょうから、到底かなうはずがありません。さあどうしましょうか。

 人数が足りないことを心配するギデオンに対して神様は、信じられないことを言います。神様は「兵は多すぎる!」って言うのです。そして神様は、3万2千人の中で「恐れている人は帰りなさい」と呼び掛けるようにと指示を出しました。ギデオンが神様に言われた通りに呼びかけると、なんと2万2千人が帰ってしまったのです。残りは何人になるでしょうか。神様は、「それでもまだ多い」と言うのです。ギデオンの気持ちを考えると「どこが多いの????」ということでしょうね。
 戸惑い、心配になり、不安になるギデオンに神様は、「水の飲み方でテストする」と言われました。皆は、川に行って水を飲む時どのように飲みますか?コップなど水を汲むものは持っていません。ギデオンが1万人を連れて水辺に来ると、「膝をついて顔を水につけて飲む人」、「膝をついて手で水をすくって飲む人」、「手で水をすくって飲む人」と分かれました。神様は、「膝をつかず手で水をすくって飲んだ人を選びなさい」と言われました。すると9,700人が帰ることになってしまいました。最終的に残った人は、何人でしょうか。

 神様は、残った300人でイスラエルを救うと言われたのです。それは、イスラエル人が自分たちの力で勝ったと言わないためでした。しかし、13万5千人対3百人勝ち目はなさそうです。けれども神様は、ギデオンに一つの作戦を伝えていました。それは、300人を100人ずつに分けて、真夜中の暗いうちに壺とたいまつと角笛を持って敵の陣営を囲むという事でした。配置についた彼らは、ミディアンの連合軍が寝静まっている時に、一斉に壺を割り、たいまつを掲げて「主のため、ギデオンのための剣」と大声で叫び、角笛を吹き鳴らしたのです。真っ暗闇に突然、壺の割れる大きな音と300人が一斉に叫ぶ声と角笛の音が響き渡ります。さらにたいまつの明かりが300本も揺れています。この騒音は、300人以上に感じられるものでした。ミディアンの陣営は大混乱となり、同士討ち(味方同士で戦うこと)となり、イスラエルの民は300人でミディアンの連合軍を打ち負かすことが出来たのです。
 この時のポイントは、ギデオンの知恵ではなく、イスラエルの民の力でもありませんでした。神様が、作戦を与えてくださり、神様が勝利を与えてくださったのです。ギデオンは、神様を信じ、神様の導きを信頼し、従ったのです。僕たちは、ギデオンの信仰を見習い、神様が僕たちを導いてくださることを信じて、神様を信頼して歩みましょう。

祈り
「愛する天の父なる神様、あなたの聖なる御名を賛美します。ギデオンは、最初臆病な人でしたが、神様に励まされ力づけられて立ち上がることが出来ました。そしてギデオンは、神様を信じて信頼した時に大勝利をすることが出来ました。神様、今も僕たちと共にいて導いてくださり、道を開いてくださることを信じます。どうぞ導いてください。2学期が始まりました。皆の学校生活を守ってください。神様の恵みに溢れた2学期となりますようにお願い致します。この祈りを救い主イエス・キリストの御名によってお祈りいたします。アーメン。」

「あなたの道を主にゆだねよ。主に信頼せよ。主が成し遂げてくださる。」  詩篇37篇5節

<適用>

 私は、中学生の時に言いようもない不安を感じたことがありました。その不安と言うのは、感情が揺さぶれると言うか、自分ではどうする事もできない恐れに近い不安でした。その時私は、「そうだ聖書を読もう」と思ったのです。私は、クリスチャンホームに育ちましたので、自然とそう思ったのかもしれません。創世記から読み始めた私は、その時、聖書によって教えられたという事ではなく、聖書を読むことで「安心感」を得ることが出来たのです。どうしてかわかりませんが、聖書を読むことによって霧が晴れるように、私の心が落ち着いて行くことを感じたのです。そして私は、不安がなくなり、心に平安を与えられることが出来ました。その時私は、心の底から、「本当の神様を知っていて良かった。聖書を持っていて良かった」と思いました。
 今日は、ギデオンの目の前の大きな問題に道が開かれるという事を見て行きましょう。

Ⅰ;神様を信頼する

 私たちが、神様を信頼する時、道は開かれます。ギデオンは、ミディアン人に対抗するために、マナセと周辺の3部族から人々を招集し陣を敷きました。
 この時ギデオンのもとに集まったイスラエル人は、3万2千人でした。神様は、集まった人たちは多すぎると言われ、彼らを整えるためにテストを行いました。1回目のテストは、「恐れおののく者はみな帰りなさい」というものでした。ミディアン人の連合軍の数は13万5千人(士師記8:10)です。これに対してイスラエルは、3万2千人です。陣営の大きさから判断するとイスラエルに勝ち目はないと思われました。だから3万2千人の中には、明らかに怯えている人がいたのです。そこで、申命記20章8節で戦いの前に告げるべき規定が採用されました。そこには、「恐れて弱気になっている者はいないかその者は家に帰れ。戦友たちの心が、彼の心のようにくじけるといけないから」とあります。恐怖心というのは、伝染しますから戦う士気を弱めてしまうのです。ギデオンが神様に言われた通り「恐れている者は帰りなさい」と言うと、なんと2万2千人もの人が帰り、1万人しか残らなかったのです。

 主はまだ、多いと言われます。ギデオンの心境やいかに。けれどもギデオンには戸惑っている暇はありません。神様が言われる通りのことをするしかないのです。2つ目のテストは、水の飲み方で、戦いに向いているかどうかを調べるというものでした(4-6節)。このテストに合格したのは、「300人」でした。9700人は、犬がなめるように顔を水に近づけ、また膝をついて水を飲み不合格となりました。どういうことなのでしょうか。顔を水につけて飲んだ人、ひざをついて手で水を汲んで飲んだ人は、水を飲むことしか考えず、武器を置いてしまいました。敵が不意に現れたら応戦できないのです。しかし、合格した300人は、片手に武器を持ち、片手で水をすくい、水を舐めるように、水分補給したのです。こうすれば、不意に敵が攻めて来ても応戦することができます。神様はいつでも敵を警戒している用心深い300人を選ばれたのです。そして主は「この300人であなたがたを救い、ミディアン人をあなたの手に渡す(7)」と約束してくださったのです。

 神様が二つのテストを行った理由は、2節にあるように「自分の手で自分を救った」と言って神様の前に高慢になることがないようにするためです。神様は、モーセを通してイスラエルの民に「神様の大きなみわざを忘れることがないように、特に安心して生活できるようになった時、主を忘れて高慢にならないように」と忠告しておられました(申命記8:11-14)。」旧約のイスラエルの民は、自分たちが不利な状況に置かれる時には真剣に神様を求めるのですが、状況が好転して落ち着くとすぐに神様の恵みを忘れてしまうことが多くありました。そして神様の恵みを忘れるという事は、自分たちは力があって、何でも自分たちで出来ると思い込むようになるのです。だから神様は、人が自分の力を誇るのではなく、高慢になることがないように、主なる神様に100%信頼することを学ぶためにこのテストを行ったのです。

 私たちは、苦しい時、弱っている時、神様に助けを求めて叫び祈ります。その時は必死なので、神様に心が向けられています。けれども苦しみを乗り越え、心にゆとりが出来た時、私たちは、主に祈ることを忘れ、神様が多くの恵みを与えてくださった事を忘れてしまうことがあるのです。ですから私たちは、どんな時でも主を忘れてはいけないと教えられる必要があります。そのために必要なことは、いつも主なる神様に祈ることです。そして自分は、神様の導きと助けがないと生きていけないと認め続けることです。私たちは、どんな時にも神様を信頼して歩みましょう。その時神様は、私たちの人生の道を開いてくださいます。

Ⅱ;神様が事を行う

 私たちが何か行き詰まりを感じた時、神様が事を行ってくださるので道は開かれます。
 神様は、300人の精鋭を選び、いよいよ戦いの時がやって来ます。とは言っても300人対135000人です。どう考えても勝ち目はありません。神様に信頼しつつもギデオンは、心のどこかで不安に思っていたことでしょう。そこで神様は、ギデオンを強めるために、若者のプラと一緒にミディアンの陣営を偵察するように勧めました(士師7:9-14)。二人が潜入して行くと、そこでミディアン人たちの夢の話を聞くことになりました。ギデオンは、この夢とその解き明かしを聞いて神様による勝利を確信しました(士師7:13-15)。

 ギデオンが神様から与えられた計画は、真夜中の奇襲作戦でした。少数で多数を打ち負かすのには、奇襲攻撃しかありません。ギデオンは、300人全員にたいまつと壷と角笛を持たせ、100人ずつ3隊に分け、3方からミディアン人たちを囲みました。イスラエルの民が配置に着いたのは、夜番の始まる時でした。ミディアン人たちは、夜の奇襲攻撃を予想していなかったでしょうし、番兵は、「異常なし」といって交替したのです。ギデオンたちは、配置について、一斉に角笛を吹き鳴らし、壷を割り、たいまつを掲げて「主のため、ギデオンのための剣」と叫びだすのです。神様の御手があったので、夜空に響く突然の騒音とたいまつの明かりのためにミディアン人の陣営は大混乱となり、同士討ちが起こりました。こうして神様の不思議なご介入がありミディアン人たちは、逃げ出しイスラエルは勝利をおさめました。
 ミディアン人の連合軍は135,000人でした。イスラエルの民は、その0.2%くらいの300人でした。どう考えても勝ち目のない戦いです。けれども300人が勝利したのです。ギデオンが強力なリーダーであり、イスラエルが強かったからではありません。神様が彼らと共におられ、神様の計画が勝利をもたらしたのです。神様は、信頼する者に不思議な導きを確かに行ってくださいます。

 私たちの人生においても同じです。私たちは、多くの事柄の中で迷い、悩み、時には心折れて気力を失うことがあります。けれども私たちは、力がないと言ってあきらめることはありません。主なる神様は強いのです。コロナ禍で私たちは、今までとは違う生活様式を取り入れています。この様なスタイルが何時まで続くのか全く見当がつきません。感染を広げないために様々な対策を取っていますが、それでも今のところ感染が収束する事がありません。私たちは、新型コロナウイルス感染が収束することを願っていますが、収束するのか、収束したとしてこれからの私たちの生活がどうなるのか分からない状況です。私たちは、この現状だけを見ると打ちのめされてしまうだけかもしれません。私たちが、見ているのは、私たちにはどうする事もできない様な現状です。しかし、その現状の中で、私たちには何でも出来て、私たちを確かに導くことの出来る神様がおられます。ダビデは、「あなたの道を主にゆだねよ。主に信頼せよ。」と大胆に告白し、私たちに勧めています。そうすると「主が成し遂げてくださる」のです。主なる神様が、私たちのために道を開いてくださいます。
 私たちは、神様が共にいてくださり、神様が事を行ってくださるので、大丈夫なのです。大切なことは、神様を信頼し、神様のみわざに期待していくことです。

祈り
「愛する天の父なる神様、あなたの聖なる御名を賛美します。今日も神様の恵みの中を歩ませていただけることを心から感謝致します。ギデオンは、不安と恐れの中神様を信じ信頼して立ち上がり、主による大勝利をおさめることが出来ました。
 神様は、今も私たちの現状を見て、知ってくださり、事を行ってくださることを感謝いたします。私たちの人生の道が神様によって開かれ、前進できることを信じます。主よ、どうか私たちを励まし力づけてください。私たちは、神様を見上げ信じ信頼して歩みます。私たちの心にある不安と取り除き、平安を与えてください。神様、一人一人の生活と健康と仕事をお守りください。この祈りを私たちの救い主イエス・キリストの御名によって祈ります。アーメン。」